Germanyドイツ
ビールといえばドイツというイメージが強いですが、ビール自体はドイツ人がビールを発明というわけではありません。 約13,000年前、農業革命が起こる前から、中東の一部では穀物を焙煎したものを水に浸して飲むと、味が良く、栄養価が高く、少しアルコールを含む飲み物ができることを発見していました。イスラエルのハイファで最近行われた考古学的発掘調査では、古代の醸造所の名残が発見されました。やがて、アルコール度数の低い「液体パン」は世界中のほぼすべての文化で主食となる飲み物となりました。
その後、世界のいたるところで、大麦やトウモロコシなどさまざまな穀物を今日の麦芽の代わりにつかってビールを造る試みは行われてきました。しかし、ミュンヘンの北に位置するハレルタウ地方で発見された特別なホップと大麦麦芽を用いて醸造すると非常に高品質なビールができることが発見されると、この製法がいたく気に入ったドイツ人たちはこれこそがビールの正式な製造法だと考え、かの有名なドイツの「ビール純粋令」を制定をします。 ビール純粋令とは、1516年4月23日にバイエルン公ヴィルヘルム4世が制定したもので「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」という内容の一文で知られる法律です。この法律は現在でも有効で、食品に関する最古の法律として有名です。 ビール純粋令の制定から300年後の19世紀後半、フランスとドイツの科学者たちは、酵母が発酵過程で果たす役割を解き明かしました。最終的には酵母は2種類に分類され、ビール醸造用に商業的に生産され、それぞれがビールの風味に影響を与えました。一方の酵母は発酵の終わりに上に浮かんでくる上面発酵酵母(エール)、もう一方の酵母は下に沈んでいく下面発酵酵母(ラガー)です。 19世紀には、ピルスナーの誕生からボックビールや輸出ビールの導入に至るまで、ドイツ語圏の国々でビール革命が起こりました。ドイツからの移民醸造家たちは、アメリカ、中国、日本、メキシコ、アフリカでビール帝国を築き、1980年代まではドイツは世界で最も多くの醸造所を抱えていました。 しかし、1990年代に入ると、ドイツのビール消費量はゆっくりと減少し始め、歴史ある醸造所の合併がすすみ、また、新しい若い醸造所が登場してきました。今日でもドイツではビールの総消費量は少しずつ減少していますが、ビールは今でも文化として根付いており、変わらぬ愛情が注がれています。 最近では日本でもなじみの深いオクトーバーフェストは、ドイツのバイエルン州ミュンヘンで毎年9月下旬から10月の最初の週末まで開催される16~18日間のお祭りです。オクトーバーフェストで飲まれるビールは、ミュンヘン市内で13.5%以上の麦汁濃度で醸造されたビールのみでならないとされています。